0326 14:00





職場の屋上で煙草を吸う。今朝もまたあの夢を見た。
そして更には昨日のあの光景と言うおまけ付き。
気分は昨日以上に最悪だった。


思えば餓鬼の頃から、泣きながら頭を撫でたり抱き締めてきたりする母親の手が嫌いだった。
妙に生温い温度が気持ち悪かった。
散々喚いた後、振り乱れた長い髪が嫌いだった。


あんたが一番泣きつきたかったのは俺じゃないだろ。


怖いのはあんただろ。


心配してるのはあんただろ。



「どいつもこいつも、人に下らねえ事ばかり押しつけやがって」


「家だなんだと……俺の知った事じゃねえ」




屋上の柵に手を掛ける。柵越しの遠くに街が見えた。

あれが行った事がある街かどうかは分からない。
だが、生きている今の内に行く事は不可能なのだろう。






「馬鹿じゃねえの……」


誰に聞かせるわけでもない言葉を吐いて屋上を後にした。