あんころもち

【 arthaz 】



『ホウエンの者とトージョウの者と対決して勝利したほうに我はつこう』
事の始まりは他国民の来訪とちょっとした思い付きだった。

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「なーにを考えてんだかなあ、あの人らは」
シッカーから経緯を聞いたヨギは岩の上で呆れの声を漏らさずにはいられなかった。
グラードンからの号令でわざわざイッシュくんだりまで行って手助けしたのは数日前。
晴れてホウエンに迎え入れられ、歓迎の宴が催されたのは昨日だか一昨日だかの事。
そして帰るかもしれないという話になったのは今日。
指折り数えながら頭の中で話を噛み砕いてみるも、良くも悪くも寛容なカイオーガとどうやら猫のような気まぐれさを持っていたらしいミュウツーに
グラードンとトージョウのルギアが振り回されてる図でしかなかった。
ここにホウオウが居たならば、もっとややこしい事になっていただろう事は想像しただけで溜息が出そうだ。女に振り回されるのは何処でも一緒と言う事か。
「……国同士での手合わせねえ」
ふーむ、と顎髭を撫でながら呼び掛けの内容を反芻する。ミュウツーが何処で暮らすかなどに関心はないが同郷の、この地に住む者たちの事が気になった。
やる気満々で手合せする者達がいるのは間違いないが、その反面でこの件に首を傾げる者達も少なからずいるだろう。
どうしたものかと思考を巡らせていてもこの山に居るばかりではたかが知れている。
それならばとゆっくりと立ち上がると、相棒は何も聞かずにスッといつでも飛び立てるよう体勢を低くした。
「まずは様子見と行こうぜ、シッカー」
背中に相棒の重みを感じたシッカーは大きく羽ばたいて離陸した。

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「ニ3~!オL・XR゙eЕiヲ゚ゥb゙」
山から少し離れた所で降り立ったヨギが見つけたのはココペリだった。いつもの連れは隣に居らず、珍しくも一人らしい。
「…貊Lリ聘|豐ア?ロ?广Y&ゥンヤ渹メェ:・」
「え、メヒタカ?」
挨拶もそこそこに、彼の相棒の所在を尋ねられた。とは言え先程山から下りてきて、最初に声を掛けたのが彼である以上彼女を見ているわけは無かった。
しかし、そこで見ていないと一言で終わらせてしまうのは忍びない。
「んー……あ、そうだ。癇現゙ウ」
少し待て、と目の前の彼に伝え、目を閉じて胸の前で合掌をする。精神を集中させ、辺りに散漫する魂の気配を辿り始める。
ややあってから深い森のある方角に覚えのある魂の存在を感じた。彼女だ。
「励さ繝シ繝峨・驕輔>縺ェ」
目を開けて合掌していた手で方角を示しながら、彼に自分が感じ取った情報を伝えると、その方角を見つめながらコクリと頷いた。
短く礼を述べた彼が一歩踏み出したその時、ヨギはふと腕を負傷している事に気付いた。
「おいおい、縺ェ縺・樟雎。縺?」
負傷したままで行くつもりかと、先を行こうとする彼を呼び止める。
その言葉に対し、何か問題でもあったかと言いたげな表情を向けてくる彼に思わず溜息が出そうなのを堪えた。
「現゙ウ……ァ豁縺励」
着用している赤い腰布の裾を摘み、ビリリと裂く。そしてそれを使えと彼に手渡した。
ヨギもこれからあちこち歩き回るつもりだが、どうせいつものようにたくし上げてしまうのだから少し丈が変わっても問題は無いだろう。
「……_盡rメ猤捌ハワ鴎涯躍+撝0芭灯慧Cワカ」
差し出された布を素直に受け取った彼が真っ直ぐに見つめながら問い掛けてきた。やはり彼は『後者』の派だったらしい。
「zノZy罧X…Bシ繝da;冶+愆m玄d乂\欄・ア・峨fァR1<限ォ或鋳カ1?」
ヨギの思う所をそのまま素直に答えると、彼の眉間に皺が寄った事に気付いた。彼の表情は納得も理解も許容もしがたい、そんな風に見て取れた。
それから二、三言交わした後、今度こそ彼は森の奥へと入っていった。
彼の背中が見えなくなるのと同時にフーッと深い溜息を吐く。
「ヨギ、ココペリハ何ト?」
「今回のコレに何か意味はあるのか、ってさ。アイツぁ真面目だからねえ」
グッと伸びをしながらシッカーの質問に答え、彼が進んだ方向とは逆の道を歩き始めた。
「でもまあ、そう思う奴も居るってこったな」
「ヨギハ、ドウ思ッテル?」
「そうだなあ。ミュウツーの事は興味無えけどまあ、折角こんな所まで来てんだ。ちょっとくらい遊んでみてえかな」
ニィっと笑いながら答えると相棒の深い溜息が聞こえたが、それを無視して歩みを進めた。

・arthaz:利益・利得
・今回は割と「なーにがしたいんだかよく分かんないねーって感じです。
・呆れと「まあ折角来たんだし遊んでいけよ」っていうのが2:8くらいの割合なので手合せ自体はやる気有りです。

◎お借りしました:ココペリさん(@あまみやさん)