【閃く光が嘲笑う】
年が明けてから自分の周りは何かと慌ただしかった。
離れて暮らしていた母が逮捕されたり、その母と暮らしていた弟が家に戻ってきたり、大雪で家に帰れなくなったりと色々あった。
そしたら今度は呪いに関する手紙である。息子2人に送られてきた、全く同一の内容が書かれた手紙に父は作家という職業柄、興味を持った。
だが、編集担当が半ば強制的に家から連れ出していった程に原稿と〆切の折り合いが芳しくないらしくそれどころでは無くなってしまったのだ。
グループでの行動と言うことで兄弟と話し合った結果、弟の同級生や知り合いを家に招いたのである。
現在、ちょっとした合宿のような状態になっている永友家の光景は、親子3人の時とはまた違う雰囲気に包まれていた。
家族以外の人間が寝泊まりしてる光景や、友人たちと接している弟の姿が自分の知っているものとはまた違うその様子を、新鮮に思っていた。
荷物を取りに帰ってきた父はその光景に「布団足りんのかあ?」と笑っていた。
そんな朝、いつものように自室で目が覚めた。
目覚めたばかりの頭はちゃんと機能せず、今はただカーテンの隙間から入ってくる日差しが明るくて眩しいと訴えてくる。
携帯の時計を見るとアラームが鳴る前に目が覚めてしまったらしい。ならばもう少し、と目を閉じて寝返りを打つ。
フニッ、という不自然な柔らかさを感じた。枕ではなく、自分の頭部からである。
睡魔など瞬時に吹き飛び、勢いよく起き上がる。
(まさか、)(いやだがしかし、)(だけど、) 何をどう考えていいのかが分からない。
今ここで叫ばなかっただけでも良かった方だ。
(どうしよう、どうしよう、どうしようどうしようどうしよう)
身体に変化が起き始めたのはいつ頃からだっただろうか。徐々にヒトには有り得ない変化が起きていた。
自身の臀部に尾が生えきってから、今度は耳が変化し始めていた。
その時と比べると進行速度は比較的遅いと思っていたが、まさか……
「……」
ゴクリと生唾を飲み込み、震える手で頭の横に手を伸ばす。ドクンドクン、と心臓が煩いほどに鳴り響く。
「そ、んな……」
酷くゆっくりと伸ばした手が掴んだのは、
ヒトならざる形の両耳だった。
・和実ちゃんだって呪われてるんですよ奥さん。
・二重呪いにはまだ気づいていない。
・気づくのはいつなのか。それはそれなのである。