あんころもち

【 VS九十九! 】


【1】




「折角だし、これ(スケボー)で勝負しようよ」
「よし来た!!」
(バキィ!)
「……何やってんの?」
「?? 板割り勝負だろ?」
「違うから!!!!!!!」

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スケボー勝負は板割り勝負の一種だと思ってました。



【2】


放課後に一人、利乃は校内を散歩していた。
テストを終えたブキ校は今、恒例の体育祭ムード一色である。
頭より身体、思考より行動の利乃にとってそれは年中行事において一、二位を争う重要イベントだ。
待ち受ける大イベントに心をワクワクさせながら歩みを進め、
適当に突き当たりを曲がって中庭に出るとそこにはアジューテ所属の同級生、九十九が居た。
スケートボードを抱える同級生に気付いた利乃は、挨拶がてらに話し掛ける事にした。
「よう九十九。相変わらずスケボーか?」
「うわ、出た」
相手は機嫌が良くないのか単純に自分を警戒しているのか、利乃を見た瞬間に見せたその表情は露骨なものだった。
「出たとは何だ。人を化け物みたいに言うもんじゃないぞ?」
「はっ、何ソレ。この前の事もう忘れたワケ?」
会話を始めて1分と経っていない内からのその態度に言葉を一つ掛けると、
眉間に皺を寄せた九十九は鼻でせせら笑いながら過去の話を持ち出した。
「この前?…何だ、お前まだスケボーの板割られた事根に持ってるのか?」
「ちっげえよ!それもそうだけど、図書館の方での事を言ってんの!!」
最近で九十九と戦ったといえば、前にスケートボードの勝負に誘われた事くらいしか浮かばなかった。
この前、と彼は言うがそれだって一月以上は経っている筈である。
そんなにも大事な物だったのかと疑問を抱きながらもそれについて言ってみると、
どうやら見当違いだったらしく否定されてしまった。
「図書館、図書館…ん?お前と会ってたか?」
「はあ!?人の事散々に追い掛け回しといて何ソレ!」
追い掛け回したという彼の言葉に首を傾げるが、記憶に掛かるモヤが少し揺れた気がしたが何かを思い出せる程のものではなかった。
どうやら九十九にはそれが不満らしく、それは表情と言葉にありありと出ていた。
「すまんがこの前の戦争はあまり覚えていなくてな。それに、文句があるなら――」
その言葉に苛立ちの色を更に深くさせた九十九と、一つの隙も見逃さんとする眼差しの利乃は一定の間合いのままに対峙する。
「拳で語れ!!」
利乃の言葉に合わせ、二人は同時に踏み込んだ。


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テスト勉強…?うっ、頭が……



【3】


「うわ、金城だ」
「だから人の顔を見るなりうわ、とか言うのやめろって。一般的な礼儀だぞ?」
校内で九十九とばったり出くわすと先日と似たような反応をされた。
まだ何もしていないのに、その反応は流石にどうかと思い若干呆れたように口を開けば、アンタの一般的は信じられないなどと随分な言葉が帰ってきた。
「つうかさ、アンタやばすぎでしょ。ほんとただのサウリアって感じ」
相変わらず人を小馬鹿にした表情の九十九の言葉が何を指しているのか分からず、
何の事かと聞けば要するに、先の体育祭で行われた騎馬戦での事を言っているらしい。
「何か問題か?」
「いやいや、普通突っ込んでいかないし。ましてや大破とか有り得ないでしょ」
普通に考えて、と答える九十九の顔は笑っていた。
余計な怪我人を増やす前に阻止出来たのだからそれで良いではないかと思う利乃にとって、
九十九の言動はよく分からなかった。
「そんなにベラベラと話すとは珍しいな。いつもならさっさと行動に移すのに」
「それアンタの方じゃん」
そうだったかと首を傾げながら過去の記憶を遡ろうとしたが、ある一点に気付くとそれを止めた。
「そういえば、何だかんだでお前の得意なスケボー勝負はまだしてなかったな?」
「え?ああ、まあそうだね。割られたし」
最後に余計な一言が入ったが、記憶は間違っていなかったらしい。
「じゃあ、お前の得意なスケボーで勝負しようじゃないか」
それは素手の殴り合いは自分の得意分野だが、例え経験が無くとも彼の得意分野で戦わないのは公平ではないと考えた利乃の提案だった。
「へえ、面白いじゃん。っつっても、今スケボー持ってないけど?」
「じゃあそれは今度な。今日の所はこれで一勝負行こうじゃないか」
利乃の提案を受けた九十九、今この場での代替案を示した利乃は互いに不敵な笑みを浮かべて見合う。
それは、今日の勝負が始まる合図であった。


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いい加減スケボー勝負しろよって話でした。


・九十九さん(@NPC)と勝負!