【 VSさんちゃん! 】
【1】
茶会から少し経った日の放課後――
茶会で倒されたからと金属バットだの木刀だのを片手に絡んできた、
ツェクン派だった生徒数名を返り討ちにした直後の利乃は少し苛立っていた。
実力不足を棚に上げ、負けた事を逆恨みして集団でしか戦いを挑めなかったその生徒達のせいなのか、
或いはあの日以降、フロッグズ総長が塞ぎ込んでいるというその様子を目の当たりにした事なのか。
利乃自身にもその原因は分かっていないが、ただただ心の中がモヤモヤとしていた。
「チョットヨロシイデスカー?」
特に目的も無く廊下を歩いていると後ろから呼びかけられた。
「さんちゃんか。何か用か?」
クラスメイトであり、そして先の茶会では盛大に暴れていたツェクンに所属している留学生。
「ワタシトクダネさがしてる。アンタナニカアル?」
「いや、持ってない……」
自分でも理解できない程に苛立った心が静まらない。
さんちゃんの特ダネに対する食いつきに対しても普段は笑いながら相手にする事が多い。
だが、塞ぎこんだ翠のあの顔を見た直後の利乃はそんな気分にはなれなかった。
「ソウ、カナシイネ。ジャア、アンタタオシテ、アンタノナサケナイ――」
さんちゃんの言葉をかき消すように、ダァンッと大きな音がする。
「私の、何だ?」
さんちゃんの顔の真横の壁には握り拳。その主は当然、利乃だった。一瞬の沈黙の後、深呼吸を一つ吐いた所で利乃が口を開く。
「同じクラスメイトのよしみだから先に言っておく。私は今、虫の居所が悪すぎるんだ――倒したいと言うなら、さっさと来い」
利乃の目は既に笑っていなかった。
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もしも利乃さんが激おこしてみたら の巻。
・さんちゃんさん(@NPC)と勝負!