【 VSミナミ! 】
【1】
ここはブキ高のすぐ近くにあるショッピングモール。
どういう切っ掛けだったかは道中の雑談ですっかり忘れてしまったが、利乃は今、現役アイドル兼フロッグズ構成員のミナミとそのモール内にあるカラオケボックスを目指して歩いていた。
連れ立って歩いてる時、何人かの通りすがった生徒がこちらを珍妙なモノを見たかのような表情をしていたが、まあ気のせいだろうと思う。
自分たちはただ二人並んで向かっているだけなのだから。
学校での体験談や実家の相撲部屋でのエピソード、はたまたアイドルという仕事の現場について
等を語りあい、互いに知らない世界を垣間見たところで目的地であるカラオケボックスにたどり着いた。
「よし、じゃあ入るか!」
利乃が意気込みながらミナミに声を掛けると、彼女も同じように元気よく返事をした。
その返事を聞きつつ利乃が一歩踏み込んで自動ドアのセンサーを反応させたところで、ミナミの足が止まった。
「あ、でも男の子と二人きりでカラオケってマズイかな……」
何かを気にし始めたミナミは自動ドアの前で立ち止まり、店の周りを少しキョロキョロと見回してからウーンと悩み始めた。
その様子を見て、何もここで悩む事も無いだろうと思いもしたが聞き取れた単語をまとめた限りではそれはすぐに解消出来そうな予感がした。
「いや、そもそも私は男じゃないから大丈夫だろ」
「え?」
利乃のあっけらかんとした言葉に思わずキョトンとした表情になったミナミに、普段は邪魔だからと短くしすぎてほぼ前掛けのような扱いになっているスカートを指で示す。
するとその存在に気付いた彼女は納得と安心の混ざった声をあげた。
「そっか。じゃあ大丈夫ね!さ、行きましょ!」
アイドルの危惧する事を利乃が察する事が出来るようになるのは当分先のようである。
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J-POPもロックも演歌も知っていれば歌えますが、女性ボーカルよりも男性ボーカルの方が歌いやすそうです。
・ミナミさん(@NPC)と勝負!