あんころもち

【 六人組手! 】



「キャー!!」
女子生徒の叫び声が聞こえると、そこにはツェクンの生徒達に足蹴にされた多分木がいた。
「痛い、痛いよぉ。やめてよぉ」
前にも何処かでこんな光景を見たような感覚を覚えたが、そんな事はどうでもよかった。今成すべきは、彼女を助けるという事である。
「おい」
「げっ、金城!? うぎゃあっ!!!」
今まさに多分木を足蹴にしようとしていた生徒に声を掛け、振り返った所でサウリア特製赤汁をゼロ距離で発射する。
生み出した当人たちでさえ危険視しているこの赤汁を、真正面からもろに食らった生徒は叫ぶ事も出来ずに地に転がって悶絶していた。
「悪いが、そこまでにして貰うぞ」
多分木を後ろに引き寄せながら残りの生徒の人数を数える。リーダー格が一人と取巻きが五人で合計六人。空手部で普段行う組手よりも少ない人数であった。
「てめえ、やりやがったな!!」
悶絶が止まり、動かなくなった仲間を見やりながら一人の生徒が怒りの声を上げる。利乃からすれば、この生徒達に怒られる道理も何も無かった。
「インクを掛ければ良いだけだろ。何でリンチしてるんだお前ら」
「さあなぁ?そいつでも潰しときゃそれなりに良い経験に思ってぇ?」
ヘラヘラと笑いながら言う彼の言葉を、利乃なりに解釈すればそれはただの弱い物虐めにすぎなかった。
それを見過ごすわけにはいかなかったし、何より許せない行いものであった。
「そうか……」
水鉄砲を下ろすとスリングで背中に回し、改めて相手の動きを一つも見落とさんとばかりにジッと見据える。
「お前らがどう思ったこう思ったの細かい事はどうでも良い。集団で殴り合いがしたいなら今すぐ来い」
指先をクイッと折り曲げてわざと挑発をする。するとリーダー格の生徒の顔色はみるみる苛立ちの色へと変わっていった。
「上等だあ!てめえからぶっ潰してやる!」
「多分木、そのまま下がって補充に行け」
相手が案の定それに乗ってくるとを見ると、多分木に下がるように小声で指示を出す。
その指示に従って多分木が下がったのと同時に、かかれ、との号令でツェクンの生徒達が一斉に飛びかかってきた。

・普段は10人組手×3回が基本。