あんころもち

【 赤汁! 】



「--っ!」
水鉄砲を撃ち続けながら数人の生徒を脱落させていると、背後に気配を感じた。
直感的に目の前にいた生徒の後ろに回り込み、実質上の盾にして避けるとその生徒の顔は真っ黒に染まっていた。
「お前が背後からの奇襲を好むとは知らなかったよ」
「あ、避けられちゃった。まあ一人脱落したし良いかな」
利乃の背後にいたのは水鉄砲片手に立っている生徒会の南瓜だった。
「本当はこういうのどーでもいいんだけどさ。インク塗れとかごめんだし」
あの常にテンションの高い会長とはまさに真逆なその無気力ともいえるマイペースさは相変わらずのようである。
似ているところがあるとすれば、何を考えているのかが読み取りにくいところであろうか。
互いにジリジリと睨み合いを続けるが、この場に留まっていても先刻の彼のように横から狙われる可能性もある。
ならば取るべき手段はたった一つ、先手必勝である。
「食らえ、赤汁!!」
叫びながら発射させたそれはサウリアの生徒たちが好き好きに集めた材料で作った赤い色水、と言う名の無計画が生み出した一種の兵器であった。
「ヴッ、何、これ……」
赤汁が命中した口元を抑え、南瓜はその場にガクリと崩れ落ちて膝をついた。
甘味を好む彼にとって、この赤汁は予想以上の効果を示したらしい。
それにしても、彼のその様子に思わず罪悪感がグッとこみ上げてくる。自分だって青汁を口元に打ち込まれたらきっとこうなるだろう。
とはいえ、今は抗争の真っ最中。勝負とは、時に割り切る事も必要であることは充分にわかっている。
「悪いな南瓜!文句はあとで聞いてやる!!」
彼が再起する前に、利乃は彼に背を向けてその場を走り去った。
(直接飲んでいないのにあそこまでの威力……赤汁、恐るべし!)


・南瓜さん(@NPC)ごめんなさい。