あんころもち

【 秘密兵器! 】



「金城を落とせ!!」
「遅い!!」
水鉄砲を構え、突撃してくる他チームの生徒達がそう叫んでいた。日頃の行いが幸か不幸かに作用したのか、利乃を標的としてくる生徒が先程から殺到していた。水鉄砲を構え、突撃してくる他チームの生徒達がそう叫んでいた。
遠距離や不意打ちならまだしも、例え飛び道具を持っていたとしても真正面からの戦いに遅れを取る利乃では無かった。ましてや利乃自身も同じように飛び道具を持っているのであればそれは尚更であった。
(うーん、流石にキリが無いな……)
色水の何度目かの補充が必要となってきた頃にどうしたものかと頭を捻った。単体を相手にしていても、状況は一向に変わらない。何か打開策を出さなければ流石の利乃であっても不利な状況に陥るばかりである。
「あ、利乃ちゃん先輩居たぁ~!!」
色水を補充しに戻ると、多分木の明るい声が耳に入った。
細い何かを抱えて駆け寄ってくる多分木に声を掛けると、元気のよい返事が返ってくる。
「多分木、何か用か?」
「うん!あのね、これ友達と偶然見つけたんだけど、利乃ちゃん先輩なら使えそうだよねって思って持ってきたの!」
そう言って彼女が差し出したのは、本物のライフル銃にそっくりな水鉄砲であった。
ツェクンの彼らならまだしも、多分木がこの類の物を一体何処から持ちだしてきたのかが不思議で仕方なかった。
「ん~っと、棟は分からないんだけど、何処かの教室に置いてあったから借りてきちゃったんだぁ~」
利乃の疑問に対する多分木の答えは無邪気そのものであった。
彼女からすれば、恐らく最後にあった所に戻しておけば良いだろう程度なのだろう。但し、それは返すべき場所が分かればの話だ。
「そっか。まあ良いか。ありがとう、多分木」
持ち主はあとで自分も一緒に探せば良いと判断し、彼女の差し出す水鉄砲を受け取る。
「どういたしまして~。あ!あとこれも預かってきたの!」
そして再び差し出されたのは前面にポケットがいくつか付けられている、これまた軍人が着用していそうなベストであった。
詳細を聞くに、替えの色水を入れたボトルをこの中に入れておけば戻ってくる回数が減り、より多くの生徒を脱落させる事が出来るだろうとの事である。
「友達がね、利乃ちゃん先輩に助けて貰った事があるからって、改良してくれたんだよぉ!」
どうやらこれも拾い物らしいが、あとで多分木にその友人を紹介して貰おうと思った。
「ありがとう、多分木。お前達の気持ち、有り難く受け取ったよ」
銃身に色水を入れ、小型のボトルに替えの色水を補充し終えると多分木に改めて礼を言った。
「じゃあ、行ってくる!」
「うん、行ってらっしゃ~い!」
多分木に見送られ、利乃はその場を後にした。

・利乃は コマンドー利乃に 進化した!▼