あんころもち

【 大破! 】



昔、誰かに読ませて貰った漫画が表した世紀末の様子さながらのリアカーが目の前で暴れまわっていた。
「で、あれどうやって止めるんだよ!!」
「安心しろ。私に良い考えがある!」
上で作戦を求める愛立の言葉を聞いた利乃は自身有り気に声を上げると、凛太郎と七星に愛立を預ける。
「え、おあっ!ちょ、利乃ちゃん!?」
「ちょ、ちょっと待て金城!!!」
クルリと背中を向け、仲間の声を聞きながら利乃は全速力で駆け出した。
「羽あああああああ生うううううううううう音ええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
名前を叫びながら眼前を走るリアカーに向かって突進し、そのまま一気に地面を踏み切って飛び上がる。誰かの叫び声が聞こえたような気がしたが、無視した。
助走の勢いをそのままに、蹴りの体勢を作るとリアカーに乗る羽生音めがけて飛び込むと、パイプの繋ぎ目辺りに命中するとバキィ、という金属と木の割れる音がした。
思った以上の威力が込められていたらしく、リアカーだった物は傾き、引き手は吹き飛ばされ、乗り手の二人もグラウンドに投げ出された。
「っしゃオラアアアア!!!!!」
羽生音本人という狙いは外したものの、『リアカーを壊す』という本来の目的を果たした事に興奮が冷めやらないままに利乃は咆哮を上げる。
「ったくよ~、イッテーなオイ」
口の中に入った砂をペッと吐き出しながら起き上がった羽生音の表情は笑っていた。
ダメージが思ったよりも少なかったのかそれとも痛みを気にしていないのか、平然としたその様子に警戒しながら構えの態勢を取る。
「ホントにサウリアのヤツらは頭がカテェな!」
起きろよと、吹き飛ばされた引き手役の二人の尻を叩いて起こしているのは超の付く典型的なツェクンの羽生音である。
どんな手段を用いるか分からない相手に、利乃を始めとするメンバーに隙は無かった。
「にしても七星ェ、まさかの利乃チャン連れかよぉ~~!」
後ろにいる七星に言葉を掛ける羽生音の様子はまだまだ余裕そうである。
「羽生音、お前の騎馬はここで止めさせて貰うぞ」
「そんな怖い顔しないでよ~。折角の体育祭なんだからさあ、楽しい顔しようよ利乃チャン?」
羽生音の言葉には返事をせず、一つ短く息を吐くとそのまま駆け出した。

・大 破 大 成 功 ! ! あとは各々が各々にバトります。

お借りしました:七星くん(@琉花さん)凛太郎くん(@榎本けふさん)愛立くん(@八倉さん)ハブくん(@あまみやさん)