あんころもち

【 先生と! 】


「もう嫌だもう嫌だもう嫌だ勉強なんてえええええ!!!」
鬱憤を晴らすように、アジューテを相手に利乃は未だに暴れ続けていた。幾たびかの雄叫びをあげ、向かってきた相手の胸倉を掴む。
「キャー!!」
女子生徒の叫び声が聞こえ、振り返るとそこにはアジューテの生徒に髪の一束を掴まれた多分木がいた。
「やめてよぉ、痛い事しないでよぉーー」
離してと言う涙声を聞いた時、頭に上っていた血がスウッと落ちていくのを感じた。
同時に今自分が何をすべきかを瞬時に判断し、掴んでいた胸倉を手放す。
「おい」
多分木の髪を掴んでいた生徒が背後からの呼び掛けに振り返ると、そこには自身よりも大きな生徒が、女生徒が立っていた。
「うっ、おぁ!」
言葉も無く繰り出された手刀で髪を掴んでいた手を叩かれると、反撃をする間も無くそのまま足を払われて床に倒れた。
「悪いが、そこまでにして貰ったぞ」
多分木を引き寄せながら言う利乃の口調は先ほどまでとは反対の、いつもの状態に戻っていた。
「てめえ、やりやがったな!!」
数十分前にも似たような台詞を誰かから聞いた気がしたが、聞き流して多分木の様子を確認する。
少々泣きそうな表情をしていたが怪我は無さそうである。
「うん、無事だな。お前は二階か教室に戻っていた方が安全だよ」
「確かにそうかもぉ、多分ねぇ。利乃ちゃん先輩、ありがとうございました!」
利乃の言葉を素直に受け入れた多分木は礼を言うとそのまま二階への階段を目指していった。
「ハッハ!!今のはなかなか良かったぞ!!!!」
多分木の背を見届けているとサウリアの教師、火村が豪快な笑い声と共に現れた。
「火村先生、どうしてここに?」
「おう!!お前らとケンカしにきたぞ!!!」
「へ?」
火村の話を要約するに、生徒同士で暴れるんだったら自分と戦おうという物だった。
「成程。楽しそうですね!!」
強者との手合わせは利乃の闘争心を何よりも掻き立てるものだ。そしてその相手が底知れぬ実力の持ち主であれば尚更である。
「おう!お前ならそう言うと思ったぞ金城!!」
「ありがとうございます!!」
サングラスの向こうに見える火村の目は教師として、実力者としての余裕さに溢れていた。
「さて!!お喋りも程々に!!!」
「始めましょう!!先生!!!!」
片方は竹刀を構え、片方は空手の型を取って対峙する。一つ深呼吸をして目の前の相手ただ一人に集中する。
「よろしくおねがいします!!!!!!!」
火村とのケンカもとい、手合わせ開始である。

・八つ当たり終了したので火村先生(@NPC)とケンカします!!!!